いつもの缶コーヒー

いつものベンチ

いつもの煙草

いつも通りの昼休み

そのはずだった。



「っ・・・・・。」


眼鏡にしたのが間違いだった。

普段はなんとも感じない煙だが、久々に目に染みる。

だとして、折角火をつけたこの一本を無駄にしたくはない。

慣れるまでの辛抱だ。

コーヒーを啜り、タバコを口に運ぶ。


「よう、。お前もサボりか、と。」


「・・・一緒にしないでくれる?」


「昼休みだ。オレもサボりじゃないぞ。

 と、なんで涙目なんだ?」


レノは勝手に隣に座る。

この男はいつもこうだ。


「何でもないわよ。」


「そうか、と。フラレたんなら、慰めてやるけど?」


「だから何でもないって言ってるでしょ。」


「わかってるって。」


シワだらけのシャツから煙草を取り出し、火をつける。

私は、このジッポーの音が好きだった。

少し俯きながら煙を吸い込む姿は、映画のワンシーンのようで。

ホント、黙っていれば、いい男だと思う。黙ってさえいれば。


「で、煙草の煙にやられたんだろ?」


「なにが」


「珍しく眼鏡だもんな。わかるぞ、と。」


「・・・そうですよ。」


ごまかすのも恥ずかしい。


「そっちもいいと思うぞ。」


「なにが。」


「ん?メガネのも可愛いと思って。」


またコイツは・・・


「口説くなら、場所と時間を選んでくれる?」


「相変わらず手厳しいな、と。」


「大体、私もあなたも暇じゃないんだから。」


「暇なんて作ればいいさ。」


「あっちのラウンジでご飯食べてる娘に声かけたら?」


「そりゃまたどうして。」


「二つ返事で誘いに乗ってくれると思うけど。」


「なるほど。確かに効率はよさそうだな、と。」


「ミス・神羅も、あなたのこと気にしてるみたいよ。」


「あー、あのブロンドで背の高い秘書課の。」


流石、詳しい。


「行ってきたら?」


「今度な。」


まったく。

悪びれる様子もなければ、真剣さも感じられない。

噂通り、女は遊び、なんだろう。


「じゃあ、私は行くから。」


「オシゴト?」


「他に何があるというの?」


「それもそうだな、と。オレも行くか。」


定時で戻るなんて、珍しい。


。」


「なに?レノ。」


「いや、何でもないぞ、と。」


「そう。」


レノに背を向け、本社のビルに足を向ける。

分かっていることだが、午後からの仕事は山積みの書類が待っている。

・・・今から肩が凝ってきそう。


「なぁ。」


歩きながら、レノが声をかけてくる。


「なんなのよ、さっきから。」


「いや、なに?は涙目も可愛いなと思っただけだぞ、と。」


そう言い残すと、あっという間に行ってしまった。


「・・・サボる気ね。」


これから自分のデスクに回ってくる書類の量は・・・想像したくない。


「今日も残業決定じゃない。」


ため息をつきながら、エレベーターに乗り込んだ。







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勢いで書いたものの、収拾がつかなくなった1作目