9月の終わり、夕方。

真夏よりは涼しい、かも知れない。

「さてと。ちゃんはどこか行きたいところ、ある?」

そう尋ねながら、並んで歩く。

「んー、いまはお腹空いてる。」

「だったら、ご飯にしようか。少し早い気もするけど。」

「葉月くんはお腹空いてない感じ?」

「今日3限にテストがあってさ、、そんなにお昼食べてないんだよねー。

 お互いお腹ぺこぺこでよかった。」

じゃあ―、とキミがお店を探している間に、僕は頭をはたらかせる。

今夜どうやって、キミとの距離を縮めるか。

出会い頭に手をつないでみたけど、キミの手は既に携帯電話。

立て続けに手をとるのは得策じゃない。

それに「手、繋いでいい?」とか訊くなんて、ボクにはできない。

どうしたものか・・・。

「ねぇねぇ。葉月くん。ここ、どう?」

キミが画面をこちらに向ける。

『魚介が決め手のラーメン店!!あなたは煮干しにひれ伏す!!』

「決まりだね。いこっか。」

自分でも惚れ惚れするくらいの笑顔を向ける。

ちゃんもうんと頷いて、一歩後ろを歩き始める。

―そして、僕のシャツの裾を掴んだ。

僕は、ソレが顔に出ないように、ゆっくりと歩いた。