「ダメだよ、逃げちゃ。」


彼女の顔に手を添え、ボクの方を向かせる。


「いい?ちゃんが抵抗した分、痛い思いをするんだよ?

 ちゃんと我慢しなきゃ。」


彼女は不安な顔でこちらを見る。


「うん・・・わかった。できるだけ我慢する。

 でも、痛いって言ったらやめて?」


・・・何言ってるんだろう。

痛いのは当たり前なのに。

口には出さないけどさ。


「できるだけ、ボクも努力するよ。」


「ありがとう、渚。」


「はい、こっち向いて。」


黒髪をかきあげ、針を手にする。


「じゃあ、刺すよ。」


針先を耳に当てる。


「っ・・・。」


彼女の身体がビクリとする。


「大丈夫だから、がんばって。」


ぷくりと、赤が膨らむ。

それを拭き取りながら、ボクは針を進める。

時間をかけてもいいことはないしね。

針を押し出すようにして、ピアスを入れる。


「はい、できたよ。」


「ほんと?ほんとに終わった?」


「うん。お疲れ様。」


「でも、痛い。」


あ、ちゃん涙目だ。

・・・かわいい。今は言わないけど。


「しばらくは痛いかも。がまんがまん!」


「うぅ・・・。」


ズキズキする、とかいわれてもなぁ・・・。

それにしても、かわいい。


「怪我だったら消毒してあげたいんだけど、ごめんね。」

 はい、鏡。見てごらん。」


「わぁ!ありがとね、渚。」


彼女も満足してくれてみたいでよかった。


「ピアスって、こんな風になるんだね。

 なんか、不思議な感じかも。」


「似合ってるよ。
 
 そうだ!今度、新しいの買いに行こうよ。

 ボクと2人で同じのつけよ?」


「渚とお揃いかぁ・・・・。

 それなら、もうひとつ開けてもいいかなぁ。」


「その時も、ボクに手伝わせて。」


笑顔を忘れず、そう伝える。

彼女自分の手でも、やって欲しくない。

他の人は、もっと許さない。


ちゃんに傷を付けるのは、ボクだけでいい。

これから先、ずっと。