もう一度くちづけを交わすと、渚が、肌に、直接、触れる。

なめらかな手のひらが、背中にまわり、猫を相手にするように撫でてくれる。


「痛っ・・・」


時々、爪を立ててくるのは、おそらくわざとだろう。


「痛かった?」


少し睨みつけると、渚は楽しそうに言う。


「それとも、もっと?」


私は、首を横に振る。


「わかった。今日は、優しくするね。」



くすぐったいような、少し違うような、そんな感じ。

だから、どうしても、渚の手に集中してしまう。

気がつくころには、いつも、下着の留め具は外されている。


「電気、消すね。」


窓から、外灯と月の光が部屋に入るから、真っ暗という訳にはいかない。

それでも、部屋の照明そのままよりは恥ずかしくない。



視覚を補うかのように、互いの手が、触れる。

私は渚の背に手を回し、渚は、私の首元に顔を埋める。

なめらかな頬が喉元にあたる。

渚は、耳元に顔を置くのが好きで、いつもこうしてくる。

私が重みを感じないようにしてくれるから、腕や背に力が入ようで、

その、いつも以上に筋張った腕が、すごく好き。



ちゃん、好き。」


耳元で、渚が囁く。

聞かなくてもわかってていたはず。

でも、やっぱり、肌を合わせているせいだろうか。

途端に、心拍数が上がる。


「みんなに見せつけたい。ちゃんは、ボクのだって。

 ボクの前では、こんな姿になるんだって。

 優しく笑う顔もかわいいけど、もっと可愛い顔も見せるんだって。」


耳元から、背中に、指先に。

そして、もっと下の方まで、ゾクリと何かが伝わる。

寒気のような、熱のような、言いようのない感覚。

自分が、渚に支配されつつあることを感じる。


・・・私も、このままずっと、渚のものでいたい。


「っ・・・・。」


渚が短く息を吐いたかと思うと、耳に温かい、ぬるりとしたものを感じる。

ぴちゃ、という音が、耳の奥に響く。

驚いて顔を動かそうとしても、渚の手によってそれはかなわない。

響く水音と、柔らかな感覚で、頭がぼうっとする。

予測できない動きのせいか、私の息も少しずつ乱れてしまう。

ある一点を吸われ、身体がビクリと震えた。


「や・・・・・んんっ・・・」


そこ、だめかも。


「ねぇ、ちゃん。さっき言ったこと、ほんと?」


はぁっ、と息を吐き、渚の方に顔を向ける。


「な・・・に・・?」


「ずっとボクのものでいたい、って。」


!!


顔に熱が集まる。


「私、声に、出してた・・・?」


「小さい声だったけど、聞こえたよ。

 ・・・聞き間違いじゃなかったんだ。」


すごく嬉しい、と、そっと触れるだけのキス。


ちゃんのこと大好きだから、ずっとずっと一緒に居たい。」


「そんなの、私もだよ。」


ううん、と渚は首を振る。


「一緒に居たいだけじゃないよ。

 ボクのものだって、ちゃんを縛ってしまいたい。

 いじめたり、痛いこともしたい。

 どんな顔も、感情も、全部ボクのものにしたいって思うんだ。」


「ひどいよね。そんなこと、ちゃんが望むはず無いのにさ。」


突然、胸にチクリと痛みが走る。

強く吸われているのか、甘い感覚よりも、痛みのほうが大きい。

抵抗しようともがいてみても、手首を掴まれているせいで、どうにも動けない。


「こんな風に、痕を付けて、ボクのものだって。」


そういうとすぐに胸の先端を舐められる。


「ぁあっ・・・・・なぎ、さ。」


ちゃん、ここ、好きだよね。」 


強く吸われると、お腹の方まで、もやもやとしたモノが広がる。

舌先で弾かれ、唇で包まれる。

渚の手のひらから、体温が伝わる。

きっと私の熱も、渚に伝わっている。


「ほんとに、かわいい。」


顔は見えないけど、きっと渚は優しい顔をしている。


「渚・・・・好き。」


もっと近くで、彼を感じたい。

そんなことばかりが、頭に浮かんだ。