「竜ヶ崎くんってさ、すごく綺麗だよね。」
「それは・・・どういう意味ですか?」
ああぁぁぁっ。
私ったら、急に何を言ってるんだろう。
どうにか普通の会話にしなきゃ!
「その、名前が!すごく綺麗だと思って!
見た感じも、音、っていうか響きも!
苗字が3文字って、すごくカッコいいじゃない!」
我ながら突然すぎる。
でも、嘘じゃないし、そう思ってるのは本当だし、これで押し切らせて。
お願いします・・・。
「それはありがとうございます。」
そう言いつつも、竜ヶ崎くんは何だか複雑な顔をしていた。
「何だか憧れちゃう。」
「そう言っていただけるのは光栄です。
ああ、でも僕はあなたも素敵だと思いますよ。」
・・・!
一瞬で赤くなったのが、自分でもわかる。
それをに気づいた竜ヶ崎くんも、驚いている。
「いや、その、あなたの名前もすごく素敵だと、
そう、僕は言っているだけですから。」
「う、うん、ありがとう。
そう言ってもらえると、すごく嬉しい、です。」
高校生が二人して敬語でお礼を言い合う。
「あははっ・・・ごめんっ・・・なんかおもしろくて・・・。」
私はこらえきれなくなって、笑ってしまった。
「実は僕も思っていました。」
「あ、もうこんな時間。
じゃあ、私そろそろ行くね。
ばいばい、竜ヶ崎くん。」
「さん。」
カバンを取り、扉に手をかけたところで、呼び止められる。
なんだろう、と思いながつつ振り返る
「・・・また、明日。」
「うん、また明日ね。」
外に出て、扉を閉める。
「また明日、か。」
早く明日になるとといいのに。
そんなことを思いながら、靴を履く。
今日の帰り道は、いつもより早歩きになるだろう。